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2023/06/01

暑い夏と農機のトラブル

今日、長野県東御市は台風の影響による前線の活発化もあって雨模様です。6月を迎え梅雨もすぐそこ。気づけばすぐそこに夏が控えています。今回はそんな暑い夏に起こる農機のトラブルについてお話させていただきます。

永く使うために

慣れ親しんだ農機具、頼りになる相棒、出来れば永く使いたい、皆さまそう仰います。それなのに持ち込まれた機械を見て、お話を伺うと「本当に永く 使いたいのであれば、もう少し気を遣ってあげて欲しい…」と思うことがあります。 「灼熱の炎天下で頑張ってるのに…。」 「オーバーヒート?勘弁してくれ。こっちがオーバーヒートじゃ!」 「整備出してるのに!」 と…。お気持ちは理解できますが、ここはそれらを未然に防ぐ為に、少しおさらいしておきましょう。不調には色々と原因があり、特に刈払い機などに多用されるダイアフラム式キャブレターを使った2サイクルエンジン農機具に関し、注意喚起の意味を含めて先に幾つかの注意点をあげておきます。  

1. 混合油について

a. 混合比

まず、それぞれの機械に使用する混合油の混合比が定められています。最近は大体50:1ですが、古い物、海外ブランドなどでは異なるものもあります。この混合比ですが、時々あるのが「前に使っていた機械は…」という理由だったり、「別の機械に使っているのが余っていた…」など軽い気持ちで25:1混合油を給油していたりします。それ以外に「同じような入れ物で管理していて…」や、「混合タンクの目盛りの使い(読み)間違いかも…」などの声も聞きます。今まであった経験では他に「混合油入れたし!」みたいな機械をばらしたら、混合油そのまま原液投入という強者もいました。混合比は曖昧にせず指定された希釈を守りましょう。

b. グレード

混合油にもグレードがあり、最近は多くの場合FD級以上がメーカー指定になっています。それ以下のものが粗悪品だとは思いません。グレードにはそれぞれ使用目的がありますので。最近の農機具ならばFD級で50:1用と書いてあれば安心です。一般的に、混合燃料で動くエンジンには普通の車やバイクなどのエンジンのように内部の潤滑や冷却の為に常に循環しているオイルというものが存在しません。供給される燃料の中に含まれる油分にその効果を担わせているわけですから、使用グレードを守ることは自分の機械に対する最低限の思いやりだと思います。

c. その他

ありがちなケースとして、農業機械の混合燃料にバイク用のものを使用する方。20Lペール缶などで比較的お手頃で購入できますが、これもNGです。結果としてピストン排気側出口にタール質と排気粉塵の合体したかなり頑固な汚れが蓄積され、排気通路が狭まります。次第に回転が上がらない症状が現れ、エンジンはかかるのに高回転まで上がらないことになります。排気口やマフラーの中をクリーニングしたりして直るのですが、混合油を正しいものに替えない限り繰り返し発生してしまいます。

2. 燃料の管理

a. 古いガソリンの使用

これは混合でない普通のガソリンエンジンの農機具にも言えることですが、余りにも古いガソリンを機械内に残したまま保管される方が多いです。ガソリンは劣化します。それは携行缶に入っていても、混合され機械のタンクに入っていても同様で、小型農機修理の5割はこの原則を蔑ろにした結果に起因していると言っても過言ではないと思います。オフシーズンに入る前には燃料を抜き取り、エンジンが止まるまで燃やしきってください。

b. 携行缶の管理

皆さまは燃料の入れ物をどのように管理していますか? 納屋、車庫、軒下、…大体そんな感じではないでしょうか。危険物なので家の中には入れたくないですし、農機具の近くに置いてあると思います。シーズン中には軽トラや作業トラックの荷台にあったりもしますね。結果、あの注入ノズルの内外が埃だらけになり、それを洗い流すように機械に給油していませんか?携行缶の中を覗いたことはありますか?ゴミや砂が沈殿していることも多いですし、場合によっては錆が発生している事もあります。新品の農機具を買っても、そこを直さなければ問題は消えません。

c. その他

軽油、灯油、との入れ物の取り間違いや、前記の原液そのままや混合液作成時の間違い、従業員や家族の理解不足などもその他の要因になりますので、自分にせよ人に頼んだり任せるにせよ、しっかりと内容を確認しましょう。携行缶に付属する充填ノズルの替わりにあの「プシュプシュ」を使ってしまうことがあります。それ自体に問題があるわけではありませんが、総じて吸い込み側のパイプが携行缶の底についてしまい、自然とゴミや混入した水などを吸い上げてしまう事になります。分かります、あのノズル壊れたり無くなったりしがちですよね。製造側の改良を期待したいところです。  

機械の管理

a. 高温対策 パーコレーションとべーパーロック

刈払い機やブロアーなど、業者の方が長時間連続使用する場合、エンジンの熱が出力低下を招く事があります。上記のようなマフラー詰まりや間違った燃料や混合比燃料の使用が無いこと、更にエンジンの周りやエアフィルターの掃除がされ機械の冷却設計が機能していることが前提になりますが、稀にエンジンが高温になりその結果、燃料がキャブレターに達する前に気化してしまい、回転が上がらなくなったり、息継ぎのような症状が現れたり、場合によってはエンストしたりします。このような現象をパーコレーションと言います。車のブレーキオイル内での気泡発生により減速出来なくなるべーパーロック現象とも似ています。このような時は基本的に熱を冷ます為、30分ほど日陰などで放置することが必要ですが、一時的な対応としてプライマリポンプを5~10回ほど押し、キャブレターとホース内の気泡を含んだ燃料を強制的に押し出したり、フロート型のキャブレターの場合はドレインなどを使い燃料を排出してしまうことも有効とされています。燃料タンクの蓋を開け内部気圧がリリースされているかを確認したり(リリースバルブが機能していれば大丈夫なはず)、また気を付けて頂きたいのが、気温の高い状況などでフルスロットル作業をしていた状態から直ぐにエンジンを止めてしまうと、エンジンやマフラーが高温状態のままになり、その熱がキャブレター側へ伝わる事によりパーコレーションを引き起こす場合もあるようです。ですので、連続作業後は出来ればアイドリングにて少し放置してから停止することも良いとされています。

b. 日向やハウス内での放置

屋外で作業される方々にとっては不可抗力な面も多いと思いますが、理屈的にはやはり良くは無いと思います。単純に機械と燃料の温度を上げてしまい、パーコレーション等に至るまでの時間が極端に短くなります。また、携行缶などの燃料タンクに関しては、ガソリン気化による膨張爆発や開口時のガス噴出と引火など不具合以前の危険もありますし、ガソリン気化による混合比の変化もあります。当然燃料自体の温度もかなり高温になっているので、自然と不具合の原因になります。農家の方などがオフシーズン中、ハウス内に混合油やガソリンを充填したままの農機を放置しているのを目にすることがありますが、これはパーコレーション云々よりも燃料劣化によるキャブレターや燃料系統の不具合を招く原因となると思います。そこに置くのであれば燃料をしっかり抜いておくことをお勧めします。  

それでも頻繁にパーコレーションが起こる場合は?

もしかしたら、その機械のキャパを超えているのかもしれませんね。特にブロアーや吸い上げポンプ、ナイロンコードを使用している刈払い機など、負荷がかかりがちな上フル回転させる機械の長時間使用は、エンジンにとっては過労レベルが半端ないはずです。プロの方が業務で使用する場合は、やはり大きく重く値段も高いかもしれませんが、それなりのプロ仕様の機種が必要なのかもしれません。 機械も人も適材適所。無理な使用や間違った管理、使用者のこじつけ理論では解決は訪れませんよね。お互いの為にも、正しい選択と管理を心がけましょう。では

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