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2023/05/30

日本の農業を世界に広めるためには!? ~国際協力プロジェクトから学ぶ~

皆様、こんにちは!
ノウキナビ事業部の”オオキ”です。
前回のブログでは海外の農業事情の一部を紹介しました。

さて、今回は実際に海外で日本の農業の技術や知見を広めていくため
には一体どのようなアプローチで進めていけば良いのか?
日本が行っている国際協力を通じた農業プロジェクトなどを参考に
その具体的な手法について今回は触れていきたいと思います。

海外で農業事業を進める際の窓口

でも「日本の農業技術を海外に広めたい!」とは考えていても
具体的に、どうしたら良いのか?その入口が分からないですよね…

その一つにJETRO(日本貿易振興機構)JICA(国際協力機構)の相談窓口
などを活用し、海外進出を図っていくという方法があります。

後者では、民間企業とJICAが共創して開発途上国の開発課題に対し
取り組んでいく「民間連携事業」というスキームもあったりします。

こういったレベルの話は、インターネット等で調べればすぐに分かる
内容かと思いますので、今回は実際にどのように海外での事業を展開
していけば良いのかという点について追っていきましょう!

ODA(政府開発援助)とは?

そもそもJICA事業を含む このODAとは一体どのようなものでしょう?

ODAとは、大別して2種類に分かれます。
一つはバイによる協力です。つまり、日本と○○国、■■国といった
ように二国間で行う援助です。
一方で、多国間援助というのは日本国政府が支援している国際機関
(国連など)を通じて行っている援助アプローチを指します。

さらに、二国間援助には「政府貸付」と「贈与」に分かれています。
前者は、いわゆる”円借款”(有償資金協力)と呼ばれるものです。
日本国民の税金を使い、援助を必要とする途上国が発展していく
ために必要な資金を貸し出すことを意味します。
そのため、借り手である途上国側は、ローンとして資金を返済する
義務を負うことになります。
有償資金協力はインフラ整備など規模の大きいプロジェクトが多く
その額は一千億単位に上ったりする案件もあります。道路や橋梁、
空港建設などがその例です。

一方で、「贈与」には”無償資金協力”と”技術協力”があります。
前者は、その名の通り、無償となるため、被援助国側は返済義務
はありません。
具体的な例としては、農業機材を途上国に送り、現地で活用して
もらい、貧困や飢餓の改善や国産米の品質向上により持続可能な
農業に結びつけるためのプロジェクトなどがこちらに当たります。

支援を必要とする途上国の要請を受け、どの機械が何台必要で、
どのルートを使い、どこに何台設置するかという調査(準備調査
と言います)をまず行い、その方針に沿い、実際にその国の
カウンターパート機関(多くの場合は省庁など)と共に実施して
いくというような流れがその一例となります。

 

技術協力プロジェクト

”技術協力”は正に国際協力の花形です。皆様が国際協力と聞いて
通常イメージされるものは、恐らくこの技術協力と呼ばれるもの
です。
技術協力は、日本が持つ技術や知見などを途上国の人々に伝え
その国が持続可能な発展となるよう人材を育成したりするもの
です。
いわゆる技術協力プロジェクトでは下記3つの要素を組み合わせ
通常3年程度の期間で実施されます。

①専門家派遣
特定の分野で深い知見を持った日本人の専門家を現地に送り
数か月単位~数年単位で技術指導等を行うもの。

②研修員受け入れ
プロジェクトの関係者を日本に招聘し、JICA国内センターや
その分野課題の解決に必要な取り組みを進めている企業や
組織・団体などを実際に訪れ、知見を深めてもらうもの。

③機材供与
その国では調達困難な専門的な機械などを日本または第三国
経由で現地に送り現地で利活用を行ってもらうもの。

 

実際にはどうやってプロジェクトを進めるの?

とりわけ技術協力プロジェクトをはじめとする国際協力の世界は
世界中でも最も困難な仕事の一つであることは間違いありません。
なぜなら、言語も、通貨も、文化・社会・経済などを含め、価値観
や宗教観なども全て異なる国の人々と共に進めなくてはならない
仕事であるからです。(加えて、時差もあったりします!)
また、プロジェクトサイトとなる場所は、途上国の山奥であったり
治安の悪いスラム地区や紛争後間もない危険なエリアが含まれて
いる案件も少なくありません。

また、同じ内容の国際協力プロジェクトであっても国によって課題
は千差万別であるため、一つとして同じ結果に至ることはありませ
ん。プロジェクトを開始する段階では想定し得なかった不測の事態
が発生することも度々起こります。
テロ攻撃や内戦の勃発、今回のパンデミックのように外部要因に
よりプロジェクトを延期または中止にならざるを得ない状況に陥る
こともしばしばあります。

したがって国際協力の仕事にはルーティンというものがありません。
刻一刻と変化する状況の中で、案件担当者は常に最良のアウトプット
に結びつくようアイディアを熟慮し続け、各国の政府関係者や自治体、
時には地域コミュ二ティの人々との対話を重ね、その国が抱える課題
解決のために全力投球し続ける毎日となります。

 

プロジェクト手法

それでは実際に海外でのプロジェクトを進めていく場合には一体
どのように行っていけば良いのでしょうか?

その答えは「PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)」という
手法を用います。
PCM手法とは、開発援助を目的とするプロジェクトの計画・実施・
評価に至るまでの一連のサイクルを監理・実施していくメソドロジー
を指します。
また、PCMは単にプロジェクト管理を行うだけでなく、課題解決方法
の一つでもあるため、政策立案や研究活動、ビジネスシーンなどに
おいても広く用いられています。

「PDCA」というサイクルマネジメントは、日本ではよく聞きますし
一般的なプロジェクト管理手法として行政や企業等でも用いられる
ことは多いですが、それをもっと複雑な状況でも活用できるように
したものと考えて頂くとイメージしやすいかもしれません。
上述したように、海外でのプロジェクトは日本とは全てが異なり、
共通の認識の上に立っている事象の方が稀であるため、それに対応
したメソッドでないと太刀打ちできません。

以前、私自身もモンテネグロやレソト、コートジボワール国等の
気候変動省など中央政府の若手・中堅レベルの政策立案者に対し
PCM手法の技術指導をアドバイザーとして行い、同国の気候変動
対策を進めていく上での重要な方針決定となる基盤づくりに寄与
してきました。

PCMでは「プロジェクト・デザイン・マトリクス(PDM)」という
概要表を用います。国際協力プロジェクト(技術協力)では
このPDMに基づき相手国政府と綿密な協議を重ねた上で、日本国
政府との間で国際約束を結び、閣議決定を経る等などして
プロジェクトが開始されることになります。
その意味で、このPDMの作成はプロジェクトの成否に直結する
極めて重要なファクターであるため、各アクターとの相互共通
理解が不可欠となります。

 

PDM作成時の留意点

PDMに記載する主な内容は、以下のとおりです。

・プロジェクト背景
・プロジェクト概要
・プロジェクト上位目標
・プロジェクト目標
・アウトプット
・活動内容
・(プロジェクトへの)投入内容
・指標
・外部条件

個別具体的に説明すると、膨大な時間と文量になってしまうため
今回は割愛しますが、重要な点としては課題の根本要因が
何であるかについて要因分析を行い、それを特定した上で
必要な活動を行っていき、その結果として、どのような目標を
設定すべきか?という流れとなります。(そのための基準となる
指標や、人為的・気象・環境要因等のリスク分析なども行い
プロジェクトの続行が不可能となってしまうような外部条件など
も併せて特定しておくことが重要です。)

プロジェクト目標は、あくまでプロジェクトが終了した時点において
そのアウトプットがもたらす状態を想定したものであるのに対して
プロジェクト上位目標は、プロジェクト終了後3~5年後の時点にて
社会全体に対してどのようなインパクトがあり、どのような姿と
なっているべきか(=アウトカム)についての設定を行います。
アウトプットとアウトカムを混同して使用されることがありますが
上述のように大きな違いがある点に留意しておく必要があります。

一通りPDMが完成したら、行うべき活動をいつからいつまでに
行うかなどを網羅的に組み込んだPO(Plan Operation)という工程表
を作成し、改めてキックオフの段階を迎えることになります。

PDMは作成して終わりではありません。目まぐるしく情勢が変化
する海外(特に途上国)では、開始時点で決めた計画をそのまま
継続し進めていくことは100%不可能です。
そのため、PDMは毎月のように変更・更新し、加除修正を繰り返し
ながら練り直していく性質を持っていると理解することが肝要です。

※PCM研修は一般の方も受講可能です。(選抜となりますので
応募書類の審査等はあります。)研修費用も高額ですが
海外でのプロジェクトを行いたい方には非常に有益なナレッジ
となりますので、ご興味のある方は是非とも調べてみて下さい!

まとめ

農業技術や、農村開発などの技術移転は我々農業従事者にとって
大きな関心事であると思いますし、我々が歩んできた道程や
その際の苦悩を地球上の似たような地域や次世代に残していく
ことは我々の世代的宿命であるのと同時に歴史的使命でもあります。

過去の惨劇を再び繰り返すことなく、現代の最先端のテクノロジー
を駆使した技術の伝承を途上国に伝えていくことを
”leapfrog(蛙飛び)”などと呼んだりします。
地球環境が危機的状況に陥っている今こそ貧困や飢餓の解決に
大きく貢献していくことのできる日本の技術を世界に伝播させて
いくことが必要であると考えます。

唐沢農機サービスでは「世界中の農業人を豊かにする世界を創る」
をビジョンに今後も引き続きアフリカ事業を展開していきます。
我々の今後の活動に乞うご期待ください!

 

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