法務担当・IPO準備室の町田です。今回は、現代企業の共通の課題となっている情報共有(ナレッジ・シェアリング)体制について紹介したいと思います。
1 ナレッジ・シェアリングとは
日々の業務を遂行する過程で身につけた知識や知見は「ナレッジ」と呼ばれています。
ナレッジとは、単なる売上データや経営に関する数値データ・分析データとしての情報ではなく、マーケティング手法や経営分析の手法など、より高次元、高付加価値な情報を意味します。
ノウハウと同じような意味で使用されますが、厳密にいえば、ノウハウは具体的な手法や方法などを意味するのに対し、ナレッジとは、ノウハウや知識が集積したもの、集合体という意味で区別されています。
具体的には、業務に必要なために行ったリサーチ業務の手法と決定した理由、会社に新たなツールやアプリを選定する際にその調査方法、新サービスを検討した際の調査資料やその流れ、結果などがこれに該当します。
いずれにしてもこれらの知見は、現代の情報産業の中において、貴重な会社の資産と考えられています。高度に情報化した現代の産業構造においては、このような情報資産を活用できるかどうかが企業の成長性に大きく影響を及ぼすことになります。
社内の知見や情報(ナレッジ)の共有については、1990年代頃から社内の課題として認識され、各先進企業において実践されてきましたが、うまく機能していない事例も多いようです。
そこで、今回は、機能するナレッジシェアリング(情報共有体制)とは何かについて考えてみたいと思います。
2 共有体制が機能しない理由について
①ナレッジが共有されない
現代では、成果主義を採用する企業が多く個人の業績が重視され、また転職が容易な時代となっています。各従業員は個人の業績に関心は強いが会社の業績には関心が弱い傾向にあります。そのため、自己が獲得した知見を他者に共有するという動機がありません。
そこで、まずは各従業員が知見を共有する動機をつくる必要があります。
一番先に思いつくのが、ナレッジ共有を個人の業績評価に加えるというものです。しかし、この方法によると、従業員は、共有することが目的となってしまい、価値の低いナレッジばかりが集積されやすく、活用されにくいという課題が指摘されています。
これについては、時間はかかりますが、企業文化を形成するという方法が有効とされています。直接個人の業績とは関連しないが、所属するチームひいては会社の業績向上を実現しようとする意識を従業員に根付かせるというものです。
また、会社が必要とする知見を明確に提示し、各従業員が知見を提供する場を整備することも必要です。
例えば、社内ネットワーク上での掲示板の設置や、従業員の個人ページの設置、従業員同士のやり取りを活発にする社内SNSなどがあります。これらを通じて、部署内で蓄積する知見が全社的に共有することを促進することにつながります。
②蓄積したナレッジが活用されない
現代では、法改正の頻度も多く、また、各インフラサービスのシステム更新の頻度も多いため、過去の知見や情報は陳腐化しやすい傾向にあります。
そこで、活用されやすい知見とは、陳腐化しやすい一次的な情報ではなく、その情報を取得するまでの方法や、これを検討し、活用するための手法となります。
例えば、新サービスを検討する際に、どのような情報から需要を把握したか、コストの計算方法、見込み売上の算定方法に関する情報については、陳腐化することはありません。
これらの新サービスを展開するまでの検討から実現するまでの流れは普遍的なものといえます。このような知見を体系的に整理して蓄積していくことが重要です。
また、蓄積された知見がどの程度活用されたかを把握することも重要です。活用度合いにより、共有体制を修正していくことになります。活用度合いを把握する方法としては、例えば、情報提供ページにアクセス数をカウントする機能を付けたり、いいねボタンを設置する、従業員へのアンケート調査などの方法があります。
3 まとめ
上記のように、これまでにない共有体制を構築していくには、社内全体の意識を変化させる必要があるため、一朝一夕に整備することはできません。比較的長期的な視点から体制整備を整えていくものになります。
また、いきなり、完全な体制を構築するというよりは、長期的な計画をもちつつ、簡易的なものから整備していき、日々トライ&エラーを繰り返していくというほうが企業文化に適った体制を整えることができます。
以上、今回は、情報共有体制(ナレッジ・シェアリング)に関して紹介しました。
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